雇用保険料率引き下げ検討の本質とは?~現状と課題を考える~
厚生労働省が発表した令和7年度の雇用保険料率の見直しについて、
報道を見る限り、全体像や意義が曖昧に感じられる方も多いのではないでしょうか。
今回の検討内容を整理しつつ、社会全体に与える影響や背景を掘り下げます。
●雇用保険料率の現状と検討内容
雇用保険料は、主に失業給付や育児休業給付の財源となるもので、企業と労働者が負担しています。
現在の料率は以下の通りです:
・失業等給付料率:0.8%(労使折半)
・二事業料率:0.35%(事業主のみ負担)
・育児休業等給付料率:0.5%(労使折半、令和7年度に引き上げ予定)
令和7年度に向けた検討では、以下の方針が示されました:
1 失業等給付の料率:財政的に最大0.4%まで引き下げ可能。
ただし、コロナ禍からの回復途上であることを理由に慎重な検討が必要。
2 二事業料率:0.35%を維持。
3 育児休業等給付料率:弾力条項を活用して現行の0.4%に据え置き。
●見えてこない「だから何?」
この報告内容から読み取れるのは、「政府は料率引き下げの可能性を検討しているが、
慎重さを強調している」ということです。
しかし、現場の労働者や企業からすれば、以下のような疑問が湧くのではないでしょうか:
・物価高の中での負担軽減は急務ではないのか?
特に、家計の可処分所得が減少している状況では、料率引き下げが大きな救いになる可能性があります。
それにもかかわらず、慎重な検討を強調する姿勢は「対応が遅い」と感じざるを得ません。
・育児休業等給付料率の据え置きは「負担軽減」なのか?
本来引き上げ予定だった料率を据え置くことを「負担軽減」として捉えるのは都合の良い解釈に過ぎません。
実際の負担は何も軽くなっていないのです。
●本質に迫る考察
こうした検討の背景には、コロナ禍で傷んだ労働市場の回復と、保険財政のバランスを取る難しさがあるのは事実です。しかし、政策の「本質」を見失ってはいけません。
雇用保険の本質とは何か?
それは、労働者の生活と雇用を守るためのセーフティネットであることです。
この本質を考えると、以下の課題が浮かび上がります:
1 迅速な対応の必要性
料率引き下げが可能であれば、物価高騰の中で労働者や企業の負担を軽減するために迅速に実行すべきです。
「慎重な検討」の名のもとに先送りされるべきではありません。
2 中長期的な財政健全化の道筋
料率を下げる一方で、長期的に持続可能な財政の構築も不可欠です。
これには、保険料率だけでなく、運用効率や制度改革を検討する必要があります。
●まとめ:政策の「質」が問われる時代へ
令和7年度の雇用保険料率に関する議論は、単なる数字の調整にとどまらず、
国民生活全体に影響を与える重要なテーマです。
政府には、都合の良い発表だけでなく、迅速かつ具体的な負担軽減策と、
長期的な財政健全化の両立を求めたいところです。
私たち一人ひとりが、このような議論に関心を持ち、声を上げていくことが、
より良い政策の実現につながるのではないでしょうか。