医師や看護師の「心」を守る――過労死白書が示す現実

厚生労働省が公表した令和6年版「過労死等防止対策白書」によると、
医師や看護師の精神障害に関する労災認定件数が増加傾向にあることが明らかになりました。
このデータが意味するものは何か――改めて考える必要があります。

●精神障害の増加が示す医療現場の危機
白書によると、医師の精神障害に関する労災認定は平成22年度から27年度の6年間で10件だったのが、
28年度から令和2年度の5年間で21件と倍増しています。
また看護師の場合は、令和2年には42件と急増しています。
特に30代が最も多いことから、働き盛りの医療従事者が大きな負担を背負っていることが浮き彫りになりました。

一見すると件数は少なく見えるかもしれませんが、これは氷山の一角に過ぎません。
労災認定を受けるまでには多くのハードルがあり、申請すらされないケースや、
症状が表面化する前に退職を余儀なくされる人も多いと考えられます。

●「命を守る人」の命を守る仕組みが問われている
医師や看護師は、私たちの命を守る存在です。
しかし、彼らが働く現場では長時間労働や激務が当たり前になっており、
過労や精神的負担によって彼ら自身が危機に陥っています。この矛盾を放置するわけにはいきません。

例えば、勤務時間の規制が議論されていますが、単に労働時間を制限するだけでは十分ではありません。
業務の負担を減らすためには、医療従事者の数を増やす、業務を分担できる体制を整える、
さらには患者対応の仕組みそのものを見直すなど、包括的な改革が求められます。

●本質は「人手不足」と「文化の変革」
医療現場が抱える最大の課題は、慢性的な人手不足と、過重労働が当然視される文化です。
「患者のために自己犠牲を」といった意識が根強い限り、問題の根本的な解決は難しいでしょう。
制度の改革と同時に、「医療従事者にも休む権利がある」という価値観を社会全体で共有することが不可欠です。

●私たちができること
この問題は医療従事者だけの問題ではありません。
私たち一人ひとりが医療現場の負担を理解し、協力する姿勢を持つことが求められます。
たとえば、不必要な受診を控える、医療従事者への感謝を示すといった行動が、医療現場を支える一助となります。

結論:命を守る社会のために
過労死白書が示す数字の背景には、無数の苦しみがあります。
命を守る人々が健やかでいられる社会をつくること――それは私たち全員の責任です。
この問題に目を向け、共に解決策を考えていく必要があると思います。

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