雇用保険法改正の意図とは?

2024年10月に施行された改正雇用保険法により、
教育訓練給付の「専門実践教育訓練給付金」に、教育訓練前後で5%以上の
賃上げを達成した場合の「追加給付(10%)」が導入されました。
資格取得の際の給付と合わせて、給付率は最大80%まで引き上げられることになりました。
この追加給付の背景にある狙いとは何でしょうか。

この改正の目的は、単なるインセンティブ提供にとどまらず、
働き手のスキル向上と賃金改善を同時に促進し、労働市場全体の質を高めることにあります。
政府としては、職業訓練や資格取得を通じて労働者が確かなスキルを身に付け、
それが昇給に結びつく形を理想としています。
しかし、訓練後の賃金改善の基準が「5%以上」と控えめである点には、
日本企業がスキル向上に見合う賃金改善を十分に実現していない現状が影響しています。
つまり、企業側がすぐに大幅な賃上げを実施する体制にはなっておらず、
賃上げに対する企業の意識や労働市場全体の賃金水準が、未だ成熟していないとも言えると思います。

さらに、給付率の上限が「最大80%」と大きく引き上げられた背景には、
自己投資としての教育訓練を労働者が積極的に活用できるようにする意図もあります。
スキルアップが収入に結びつかない限り、自己投資の意欲が損なわれ、
訓練制度を利用する人も減少してしまう恐れがあるためです。
このように、給付制度は労働者と企業の双方に「スキル向上と賃金改善」を促す構造を目指しているのです。

今後の課題としては、この追加給付がどれだけの実効性を持つかが挙げられます。
労働者が実際に5%以上の昇給を得られるか、また企業がスキル向上に応じた賃金改善を行うかが、
この制度の成否を左右する鍵となるのではないでしょうか。

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