最低賃金に縛られる非正規の現実
厚生労働省の調査によれば、
中小企業の約6割がパートやアルバイトの賃金を決める際に「最低賃金」を基準にしているという。
正社員の賃金が自社の業績や職務内容を反映しているのに対し、
非正規の賃金は地域別最低賃金に事実上“張り付いている”のが実態だ。
なぜこうなるのか。
中小企業にとって人件費は最大の固定費だが、販売価格に十分転嫁できるほどの体力がない。
人手不足で人材を確保したい思いはあっても、自由に賃上げできる余裕はなく、
結局「最低賃金+α」で抑えざるを得ない。
つまり、非正規労働者の賃金は「企業が人材に払いたい額」ではなく、
「法律で払わざるを得ない下限」で決まってしまっている。
労働の価値や成果よりも、最低賃金の改定が直接の賃上げ要因になっているのだ。
この構図は、日本の賃金の底上げを最低賃金に依存させている現状を示している。
非正規雇用が労働市場の大きな割合を占める以上、最低賃金の改定は単なる数字の問題ではなく、
社会全体の賃金水準と生活水準を左右する“実質的な賃金政策”になっている。
正社員と非正規で賃金決定のロジックが違うことが、格差の固定化を招いているとも言える。
中小企業の体力不足と、最低賃金への依存構造。
この2つが、日本の労働市場の「賃金が上がらない理由」を象徴的に物語っている。