「4.3%の再認定が突きつける 障害年金制度の“見落とし”」

日本年金機構が公表した令和6年度の障害年金認定状況の見直しで、
精神障害などの不支給事案2,895件のうち124件が支給に変更された。割合にすれば4.3%。
だが、この数字は単なる訂正ではなく、制度の根幹を揺るがす“警鐘”だ。

厚生労働省の調査によれば、令和6年度の障害年金の不支給率は過去最高の13%。
とりわけ精神障害は前年の6.4%から12.1%へ倍増した。
背景には、障害等級の目安より下位に判定され、不支給となったケースの急増がある。
つまり「支給対象なのに認められなかった人」が多数存在したということだ。

精神障害の認定では、症状の一時的な改善や就労の有無が重く見られる傾向がある。
しかし、働ける時間が一日二時間でも「就労可」と判断される現場がある。
再就職を試みただけで「社会復帰できる」とみなされ、不支給となる例も少なくない。
本来、障害年金は“働くかどうか”ではなく、“日常生活を自立して送れるか”で判断されるべきものだ。

今回の点検で年金機構は、病状の経過や予後、対人関係の困難さ、
生活環境などをより重視するよう方針を改めた。
だが、それは救済ではなく是正だ。誤った判断で支給が途絶えた期間、人々の生活はすでに破綻している。医療を断念した人もいるだろう。
「支給決定に変更された」という報告の裏に、取り返しのつかない損失が横たわっている。

年金機構は年内を目途に約1万1千件の不支給事案を点検する。
だが本当に問われるべきは、不支給率という数字の上下ではない。
一人ひとりの生活をどう見ているのか、
判断の基準は現実に即しているのか──制度の姿勢そのものである。

障害年金は慈善ではない。生きるための「権利」だ。
124件の再認定は、ようやく見直しが始まった証であり、同時に制度が見落としてきた現実の数でもある。
机上の公平よりも、現場の実態に根ざした公正を。
今こそ、制度の原点に立ち返るときだ。

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