介護の現場は、数字より先に疲れている
厚生労働省は2024年12月、令和6年「介護サービス施設・事業所調査」の結果を公表した。
調査は全国の介護保険施設や居宅サービス事業所など約25万9千を対象に行われ、
実際に活動している約22万施設・事業所の状況が集計されている。
日本の介護の「今」を最も端的に示す公式データと言っていい。
まず施設の動向を見ると、特別養護老人ホームにあたる介護老人福祉施設は8,621施設と、
前年よりわずかに増えている。一方で、在宅復帰を担ってきた介護老人保健施設は4,214施設に減少した。その代わりに急増しているのが介護医療院で、917施設と、1年で15%以上増えている。
この数字を並べると、介護の選択肢が広がったようにも見える。
しかし実際には逆だ。
医療院の増加は、高齢者の状態がより重くなり、従来の介護施設では対応しきれなくなっていることを
示している。自宅に戻ることを前提とした老健が減り、医療と介護を同時に抱え込む施設が増える。
この流れは、介護が「回復を支える段階」から、「看取りに近い段階」へと押し出されている現実を
映している。
居宅サービスに目を向けると、訪問介護事業所は3万7,264、訪問看護ステーションは1万8,042と、
いずれも前年より増加している。特に訪問看護は約10%増と大きく伸びた。
厚労省が掲げてきた在宅重視の政策は、数字の上では確かに進んでいる。
しかし、ここでも注意が必要だ。
訪問介護員は全国で52万人余りいるとされるが、現場では慢性的な人手不足が続いている。
事業所が増えても、働く人の多くは短時間勤務や登録型で、移動や待機の負担を抱えながら働いている。
数字は拡大していても、1人ひとりが無理をしなければ成り立たない構造が強まっている。
通所介護は2万4,585事業所と、ほぼ横ばいだ。
地域密着型通所介護に限ると、むしろ減少している。
送迎や入浴、食事といった人手のかかるサービスを抱えながら、報酬は抑えられたまま。
結果として、小規模な事業所ほど続けられなくなり、静かに姿を消していく。
この動きは、数字以上に地域の介護力を削っている。
従事者数を見ると、特別養護老人ホームで約30万人、老健で12万人、通所介護で22万人と、
多くの人が介護に関わっていることが分かる。
それでも現場では「人が足りない」と言われ続ける。
これは人数の問題というより、続けられる条件が整っていないことの表れだ。
賃金、労働時間、責任の重さ。その歪みが解消されない限り、数字が増えても実感は伴わない。
この調査が示しているのは、介護が安定しているという姿ではない。
制度としては形を保っているが、その内側では疲労が蓄積している。
施設も事業所も、存在している限り統計には載る。しかし、限界に近い状態かどうかは数字に表れない。
介護の問題は、統計を読む側にとっても無関係ではない。
この数字の先には、家族であり、そして将来の自分自身がいる。
整った数字の裏側にある現実を、私たちはもう一度、冷静に見直す必要がある。

