令和6年の出生数が過去最少を更新
令和6年の出生数が72万988人と、過去最少を更新した。
前年から約3万7,000人(5.0%)の減少で、9年連続の減少。
一方で死亡数は過去最多の161万8,684人となり、
自然増減(出生数-死亡数)はマイナス89万7,696人という、記録的な人口の“純減”が起きている。
いま日本では、静かに、しかし確実に「人がいなくなる」社会が進行している。
だが、この事実が、実際に暮らす私たちの感覚と一致していないのはなぜだろうか。
■「子どもが減っている」のは、希望が失われているサイン
少子化の原因を「若者の自己責任」とする声もあるが、それは本質を見誤っている。
多くの若者は今も、家庭を持ちたいと願っている。
しかし、その希望を支える経済的・社会的な基盤が、あまりにも脆い。
非正規雇用、長時間労働、高すぎる教育・保育費、育児支援の乏しい地域格差――。
結婚や子育ては“選ばない”のではなく、“選べない”現実がある。
これは「意識の問題」ではなく、「構造の問題」だ。
■ 崩壊を止めるカギは、“安心して子育てできる日常”の回復にある
少子化を数字で語るのは簡単だ。
しかし必要なのは、「ひとりひとりの人生」が前向きに歩める社会の構築だ。
家族を持つことがリスクではなく、“ささやかな幸せとして手が届くもの”に変わる社会
――それは特別な夢ではない。かつての日本が、ある程度まで実現していた現実でもある。
いま必要なのは、魔法のような大改革ではなく、「暮らしの現場」を支える地道な変化だ。
たとえば、
保育の無償化を地域格差なく進めること
若者の住居・雇用の安定を優先すること
子育てを“個人の責任”ではなく“社会の喜び”と捉える風土の醸成
そんな一つひとつの積み重ねが、未来を変えていく。
■ 希望は、まだある
出生数72万人という数字は、日本社会から希望が薄れつつあるという“静かな警告”だ。
だが裏を返せば、希望さえ取り戻せれば、再び社会は息を吹き返すとも言える。
人は、「この場所で生きたい」「ここに未来がある」と思えるときに、命をつなぐ決断をする。
この国の未来は、“子どもが生まれやすい社会”を作ることではなく、
「子どもを迎えたいと思える社会」をどう築けるかにかかっている。
その兆しは、小さな自治体の挑戦や、企業の柔軟な働き方改革など、すでに各地で芽生えている。
私たちが少しずつ関心を持ち、行動することで、その芽は確かな希望へと育っていく。