雇用保険料率0.1ポイント減少、その先に何が見えるか

令和7年度の雇用保険料率が8年ぶりに引き下げられることになった。
厚生労働省は2025年度(令和7年度)の雇用保険料率を現在の1.55%から1.45%へ、
0.1ポイント引き下げる方針を決定。
失業等給付に充てる部分の料率を下げたもので、育児休業給付や教育訓練給付に関する部分は変わらない。

この発表を受けて、「だから何なのか?」と感じる人も多いだろう。
0.1ポイントの変化は、企業や働く人にどんな影響を与えるのか。

① 企業にとっての影響——負担軽減は限定的?
企業が支払う雇用保険料は、会社と労働者の双方が負担する仕組みだ。
今回の引き下げにより、企業と従業員の保険料負担は軽くなるが、その恩恵は限定的だ。

例えば、年収500万円の会社員の場合、雇用保険料の負担は現在年間77,500円(労使合計)。
これが0.1ポイント下がることで、年間負担は72,500円となり、5,000円の軽減にとどまる。
企業負担分も同様に減るが、大きなコスト削減とは言い難い。

つまり、企業にとって「助かる」と言えるほどのインパクトはない。
むしろ、「なぜ今、保険料を下げるのか?」という背景の方が重要だ。

② 失業給付財源の余裕?それとも景気対策?
雇用保険料は、雇用情勢や失業率によって変動する。では、今回の引き下げは何を意味するのか?

背景には、コロナ禍で一時的に引き上げられた雇用保険料率が、
失業率の回復とともに適正水準に戻りつつあるという事情がある。
政府は「財源に余裕がある」と判断したのだろう。
しかし、景気が不透明な中での引き下げは、将来の給付水準に影響しないのかという不安も残る。

さらに言えば、0.1ポイントの引き下げは「企業支援」としてアピールしやすいが、
実質的な経済効果は小さい。政府の「負担軽減アピール」の側面が強いとも言える。

③ 未来への影響——育児・教育関連給付は据え置き
一方で、育児休業給付や教育訓練給付などの「働く人の支援」に関する部分は据え置かれた。
少子化対策やリスキリング(学び直し)の重要性が高まっているためだろう。

つまり、今回の引き下げは「企業の雇用コスト負担を若干軽くするが、働く人の支援は維持する」
というメッセージと読み取れる。

結論——見せかけの負担軽減ではなく、本質的な議論を
0.1ポイントの雇用保険料引き下げは、企業にとっても働く人にとっても劇的な変化をもたらすものではない。
むしろ、「なぜこのタイミングで引き下げるのか」「本当に必要な支援は何か」を考える契機にすべきだ。

少子高齢化、労働力不足、失業リスクの変化——これらを踏まえた雇用政策こそが本質的な議論となるべきだろう。
政府の「負担軽減」の言葉に惑わされることなく、私たち自身が今後の働き方と保障のあり方を考える必要がある。

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