技能実習制度は本当に「役立っている」のか?
外国人技能実習機構の最新調査によると、
技能実習を終えた9割以上の実習生が「帰国後に役立った」と感じたそうです。
一見すると、制度の成果を示す数字のようにも見えますが、
この「役立った」という言葉は一体何を意味するのでしょうか?
それは、本当に制度の目的を達成している証といえるのでしょうか?
まず、「役立った」という回答が表すものは曖昧で、
具体的に何がどのように役立っているのか、詳細な部分は明らかではありません。
日本で得た技術や知識が、母国での生活や仕事にどれほど貢献しているのか、
その実際の姿はこの数字だけでは見えてきません。
技能実習制度の本来の目的は、単なる「技術移転」ではなく、
実習生が母国でその技術を活かし、生活向上に役立てることにありますが、
果たしてその目的にどれほど近づいているのでしょうか。
さらに、実習中の困難な事柄についても見逃せません。
実習生の16.2%が「困ったことがあった」と回答し、
その理由として「家族と離れて寂しかった」(55.1%)、
「仕事が厳しかった」(23.1%)などが挙げられています。
また、「賃金が少ない」(19.6%)、「住居の環境が悪い」(10.7%)、
「精神的な嫌がらせを受けた」(6.8%)など、厳しい状況に置かれている実態も浮かび上がっています。
「役立った」という高い割合がある一方で、技能実習生が安心して働ける環境や、
生活の質が十分に確保されているかには疑問が残ります。
本当の意味で制度を成功させるためには、単なる満足度や数字という表面だけでなく、
実習生の長期的な生活改善やキャリア形成まで含めた視点からの評価が必要ではないでしょうか。