同一労働同一賃金の是正指導が急増
厚生労働省が2024年7月に発表したデータによると、
正社員と非正規雇用労働者との「同一労働同一賃金」に関する是正指導の件数が、
昨年度の404件から3,450件に大幅増加しました。
この背景には、政府がこの原則の遵守を強化するため、
労働基準監督署を通じた実態調査や指導を強化したことがあります。
そもそも「同一労働同一賃金」とは、
同じ内容の仕事をしている限り、正社員も非正規労働者も同じ賃金や待遇を受けるべき、という考え方です。
企業は「正社員だから特別に待遇が良い」という曖昧な基準ではなく、
実際の業務内容に応じた公平な待遇を整える責任を負うようになります。
増加の背景:企業の対応が追いついていない
この是正指導の急増は、単に調査件数の増加だけでは説明できません。
実際には、多くの企業が「同一労働同一賃金」の原則に対する理解が不十分であったり、
対応が後手に回っている現状が見て取れます。
特に、日本の雇用慣行は、長年にわたって正社員を中心に構築されており、
非正規雇用者に対して同等の待遇を与えるという意識がまだ根付いていないことが指摘されています。
企業に求められる対応とは?
これからの企業に求められるのは、単なる形式的な遵守ではなく、
業務内容や労働条件に基づいた公平な人事制度の構築です。特に、以下の点を見直す必要があります。
職務内容と賃金の整合性の再評価
正社員と非正規労働者の業務内容を再確認し、
それぞれの仕事内容に応じた賃金や福利厚生を見直す必要があります。
業務が同じであれば、賃金も同等であるべきです。
透明な評価基準の導入
正社員、非正規労働者を問わず、評価基準を明確にし、
待遇が業務成果に見合う形で公平に行われる仕組みを整えることが重要です。
社内の意識改革
「正社員が優遇されるべき」という旧来の価値観は、企業にとってリスクになります。
全従業員に対して、公平な待遇が当たり前であるという意識を浸透させる必要があります。
今後の展望
この是正指導の増加は、単なる一時的な現象ではなく、今後さらに強化される可能性があります。
労働市場の変化や、国際的な労働基準の進展に伴い、企業はこれまで以上に柔軟かつ公平な対応を求められるでしょう。企業がその対応を怠るならば、法的リスクや従業員のモチベーション低下に直結するため、積極的な対応が必要です。
「同一労働同一賃金」の原則は、単に法律の問題ではなく、
企業の信頼性や持続可能な発展にも大きく関わるテーマです。
これを機に、企業は労働環境の再設計に取り組むべき時期に来ていると言えるでしょう。