個人から読み解く労働経済白書

白書では企業と労働者の関係性の変化を扱っている。だが、その背景にある変化はもっと本質的だ。

日本人は、
「仕事に何を求めているのか」
その価値観自体が根底から変わってしまった。

2001年、働く目的の上位は「生きがい」だった。
しかし2024年、はっきりと数字が語っている。
働く目的は“お金”が6割を超え、 “生きがい”は1割台に落ちた。

企業が「やりがいを…」「使命感を…」と唱えても、もう響かない。
それは日本人が冷たくなったのではなく、生活がすでにギリギリだからだ。

同じく白書は、転職者が増加し、生え抜き社員の割合が確実に減っていると分析する。
つまり、企業は「一度入ったら定年まで」のモデルで人材を繋ぎ止めることができなくなった。

しかし多くの企業は、まだその前提で制度を作っている。
給与は年功的で、異動は会社都合が中心、働き方も一律…。
そのままでは、人は来ないし、辞める。

とりわけ社会インフラ職種(医療・福祉、運輸、建設、接客など)は深刻だ。
社会を支えている職業ほど賃金が5万円近く低い。
使命感に頼ってきた結果、人が残らず、社会そのものが揺らいでいる。

白書は、企業にこう求めている。
「賃金と福利厚生を改善せよ」
「労働者の価値観に合わせて働き方を柔軟にせよ」
これらは当たり前の話だが、これまで“当たり前にできてこなかった”から、いま危機になっている。

本当に必要なのは、
「企業が労働者を選ぶ」時代から「労働者が企業を選ぶ」時代への完全な移行だ。

働きやすい会社に人が集まり、そうでない会社は淘汰される。
白書が伝えるのは、そんな当たり前の未来がもう目前だということだ。

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