ストレスチェックの本当の効用とは

「ストレスチェック、受けましたか?」

定期実施されるこの制度。
質問票に「はい」「いいえ」と答えていくと、
「あなたは高ストレス者です」とか「問題なし」とか、診断らしきものが表示されます。

しかし正直に言えば、多くの社員は「この答えを選ぶとまずいだろう」と察して、
無難な選択肢を選びます。つまり、本音より“空気”が反映される仕組みになりがちです。

健康診断を思い出してみてください。

血液検査や心電図など、客観的なデータが診断の根拠になります。
一方、ストレスチェックは自己申告だけ。精度という点では、どうしても限界があります。

では、経営者としてはどう向き合えばよいのでしょうか。
「個人結果は本人にしか返されない。経営者は何もできない」――そう思ってしまうかもしれません。
確かに直接的に個人の状態を知ることはできませんが、
それでも企業にとって有効に使える方法があります。

  1. 集団データを“経営数字”として扱う

ストレスチェックでは部署単位や全社単位での傾向がフィードバックされます。
・どの部署が「業務量の負担」を強く訴えているのか
・どの部門が「人間関係のストレス」を多く抱えているのか
こうした傾向は経営のヒントになります。
業績や離職率と並べて見ると、「業績が停滞している部署はストレスも高い」
といった相関が見えることもあります。これは経営者にとって無視できないデータです。

  1. “匿名の声”を拾う仕組みを足す

制度上の設問だけでは深い部分に届きません。
そこで匿名アンケートや外部相談窓口を併設し、
「数字」と「自由意見」の両方を集める仕組みにすると、現場の実態がより浮き彫りになります。

  1. 結果を“構造改善”の入口にする

大切なのは「誰が高ストレスか」ではなく「なぜその部署でストレスが高いのか」です。
・業務の偏り
・上司のマネジメントスタイル
・評価制度の不透明さ
こうした組織の問題が見えれば、改善は経営課題そのものになります。

  1. 経営者が“本気”を示す

最後に欠かせないのはトップの姿勢です。
結果を社員に返して終わりでは意味がありません。
「来期は休暇取得率を経営指標に組み込む」
「業務負荷の集中を防ぐ仕組みをつくる」
こうしたメッセージを発信すれば、社員は「この会社は本気で環境改善に取り組んでいる」と感じます。

ストレスチェックは、表面的に見れば「形だけの制度」に見えるかもしれません。
しかし経営者が「こなす」から「活かす」に切り替えれば、
組織の健全性を測るひとつの経営資源になります。

結局、制度が会社を良くするのではありません。
制度をどう使うかを決めるのは、経営者の意思そのものなのです。

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