制度づくりより「使える仕組み」を―教育訓練休暇給付金

令和7年10月から始まる教育訓練休暇給付金。
無給で長期休暇を取り、学び直しをする人に生活費を支給するという仕組みです。
理念は立派です。人材育成やキャリア形成を支援する姿勢もわかります。
けれども、現場から見れば「絵に描いた餅」に過ぎません。

調査結果は冷徹です。大半の企業が制度を導入していません。
その理由の筆頭は「代替要員の確保が困難だから」。
慢性的な人手不足の中で、一人が数十日抜ける余裕などあるはずがありません。
制度を整えたとしても利用できるのはごく一部。
実際、導入企業でも30日以上の休暇を使える人は3割に満たないのが実態です。

つまり「制度はあるけれど使えない」。
これでは制度のための制度になってしまいます。
現場から見れば、紙の上で作られた仕組みがまた一つ増えただけ。
むしろ管理や手続きの負担が増える分、迷惑ですらあります。

制度を設計する側の人々は、往々にして「理想的な働き方」や「時代の要請」を語ります。
しかし、制度は現場で機能してこそ意味がある。
現実を無視した仕組みは、労使にとって疲労と不信感を残すだけです。

本当に社会に必要なのは「制度の数」ではありません。
「誰もが使えるシンプルで実効性のある仕組み」です。
立派に見える制度を並べるより、目の前の労働環境を一つでも改善する方が、
働く人にも企業にもはるかに役立ちます。

制度づくりに自己満足しているうちは、現場はいつまでも報われません。
社会を動かすのは机上の理想ではなく、現実を支える現場の声です。

机上の制度づくりはもう十分です。
これから求められるのは、現場で働く人が「これは使える」と実感できる仕組み。
その当たり前を取り戻すことこそ、本当の改革ではないでしょうか。

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