出生数が減少する国で、私たちは何を失っているのか
2025年、出生数がついに70万人を下回りました。
厚生労働省が発表した人口動態統計によれば、2024年の出生数は68万6,061人。
戦後最大だった昭和24年(1949年)の約270万人と比べると、実に200万人もの減少です。
一方、亡くなった人の数は160万人超。
つまり、日本という国全体が、1年間で約92万人減ったことになります。
東京23区の人口がまるごと消えるレベルの話です。
■でも、だから何?と言われれば、それが問題
こうした報道が出るたびに、「少子化対策を強化します」「支援を手厚くします」
といった行政のコメントが並びますが、
その一方で、多くの人が「またか」と思って流してしまうのではないでしょうか。
なぜなら、現実が何も変わっていないからです。
給付金や一時的な支援策があったとしても、
根本的な不安――「この国で子どもを育てていけるのか?」という問いに、答えが出ていないのです。
■出生率は「個人の選択」ではなく「社会の鏡」
少子化を「若者のわがまま」と決めつける声もありますが、それは全くの見当違いです。
出生率は個人の選択というより、社会の構造の結果です。
たとえば、
・正社員になれない若者
・家賃が高くて家庭を築けない都市部の生活
・保育園不足や教育費の高さ
・キャリアか育児かを迫られる女性たち
これらの問題がすべて、「子どもを持つ」という選択を難しくしています。
■未来を支える存在が減るということ
少子化の一番の問題は、子どもが減ることによって、未来を支える人がいなくなるという点です。
今の子どもたちは、将来の労働者であり、納税者であり、社会保障制度の支え手です。
つまり、彼らの数が少なければ少ないほど、高齢者も現役世代も、
より大きな負担を背負わされることになる。
これはもはや、若い世代だけの問題ではなく、私たち全員の「生きていく力」に関わる話です。
■本質に迫るために必要な視点
私たちが問うべきは、「どうすれば子どもが増えるか」ではありません。
「なぜこの国で子どもを産み育てたいと思えないのか」を正面から問い直すことです。
国の制度も、企業のあり方も、個人の意識もすべてが絡み合ったこの問題に、
・上っ面の数値対策ではなく、
・政権維持のためのアピールでもなく、
・次の選挙を見据えた人気取りでもなく、
持続可能な社会の設計という本質に立ち返った議論が必要です。
最後に
数字は、社会の警告です。
そして、それをどう受け止めるかは、私たち次第です。
誰もが「自分には関係ない」と目をそらし続けるなら、静かに、しかし確実に、
この国の未来は立ちゆかなくなっていく。
結びにふさわしいのは、「だから、私たちはどう動くのか」という問いかけしかありません。