「就職率98%の幻想」——見かけの好調が示す、日本の若者のリアル
厚生労働省と文部科学省が発表した「令和7年3月卒の大学生の就職率」は98.0%。
調査開始以来2番目に高い水準とのことで、「売り手市場は続いている」と厚労相は胸を張る。
だが、これを素直に「明るいニュース」と受け取っていいのだろうか。
たしかに、就職「できたか・できなかったか」の統計では高水準だ。
しかし、その内実に目を向けると、状況は一変する。
企業が“若者”というだけで大量採用し、3年以内の離職率が3割を超える現実。
学生側は「内定が出た会社にとりあえず入る」選択をし、
企業側は「人がいないから誰でもいい」と門戸を広げる。これは真のマッチングではない。
つまりこの98%という数字は、「納得して働ける職に就いた人が多い」というよりも、
「とりあえず埋まった」という数合わせにすぎないのではないか。
しかもこの統計、「就職希望者」のうちの就職率であって、
「進学」「資格勉強」「フリーター志望」などを除いた上での割合だ。
全卒業生中の就職率ではない。さらに、雇用形態や待遇の内訳も見えない。
見かけの数字は立派でも、若者のキャリア選択の質、そして労働市場の健全性は、
むしろ危うさを増している可能性がある。
本当に問うべきは「就職率」ではなく、
「働くことの意味」や「個人と社会の接点としての仕事の質」だろう。
高い就職率に安心する前に、
その数字が覆い隠す“不本意就職”や“早期離職”の実態を直視すべきではないだろうか。