保険料はじわじわ上がり、組合は赤字だらけ――健保はもう限界なのか?
健康保険組合(健保組合)の保険料率が、また少し上がります。
2025年度(令和7年度)の平均保険料率は9.34%、前年度から0.03ポイントの上昇です。
たった0.03?と思うかもしれません。
でもその裏にあるのは、健保制度が静かに、しかし確実に「限界」に近づいているという現実です。
■ じわじわ上がる「保険料」の意味
保険料率9.34%というのは、
ざっくりいえば「会社と社員が合計で月収の9.34%を健康保険に払っている」ということ。
たとえば月収30万円なら、月2万8,000円くらいが保険料として差し引かれている計算になります
(会社と折半なので本人の負担はその半分)。
保険料率は過去10年でじわじわと上がり続けています。
その原因のひとつが「高齢者医療への支援金」
――つまり、現役世代が高齢者の医療費を肩代わりする仕組みです。
この拠出金が毎年のように膨れ上がっていて、
もはや健保組合の多くは自分たちの組合員の医療費だけでは赤字にならないのに、
“拠出金のために”赤字に転落している状況です。
今回の発表では、全国1,372の健保組合のうち、
実に約8割(1,043組合)が赤字になる見通しとされています。
賃上げで保険料収入は増えているのに、赤字。この意味は重い。
■ なぜこんな仕組みになっているのか
健保組合というのは、主に大企業や業界団体が自前で設立している医療保険の仕組みです。
サラリーマンの中でも比較的所得が高い人が多く、
医療費の自己負担も少ない(健康な人が多い)ため、かつては「黒字で当たり前」な存在でした。
ところが、今はその“余裕のある健保”が、制度全体の「調整弁」として
負担を押しつけられる構図になっています。
要するに、高齢者が増えるたびに、現役世代の“財布”が軽くなる仕組みです。
■ このまま行くと、どうなるのか?
現在の制度では、今後も高齢者の医療費が増え続け、拠出金の負担も膨らみ続けるのは確実です。
そうなると、次のような事態が現実味を帯びてきます:
・保険料率は10%を超え、手取りがさらに減る
・健保組合が解散し、協会けんぽ(中小企業向けの保険)に統合される
・組合間の連帯が壊れ、制度そのものが立ち行かなくなる
今の仕組みを続ける限り、「働く人の負担」は増える一方で、
「健康保険組合の持続可能性」はどんどん失われていきます。
■ 「微増の保険料率」に込められた警告
たった0.03ポイントの上昇。
その数字の裏にあるのは、「少しでも上げないと持たない」という健保組合の苦悩と、
「これでも足りないかもしれない」という将来への不安です。
つまり、今回の発表は、「いよいよ制度の継続が危うくなってきた」という静かな警告でもあるのです。
■ 最後に
健康保険制度がこれほど不安定になっているのに、大きな議論も改革の動きも起こっていません。
これは、私たちが“制度に対して無関心すぎる”ことの裏返しでもあります。
自分の給与明細にある「健康保険料」の数字。
その意味を見つめ直すことから、制度の持続性について考えるきっかけになるかもしれません。