高額療養費の上限見直し—結局、負担はどうなるのか?

厚生労働省が進めていた高額療養費制度の自己負担限度額の引き上げについて、一部修正が入った。
もともとは、現役世代の保険料負担を軽減する目的で、
自己負担の上限を約10%引き上げる方針だったが、長期療養患者への影響を考慮し、
一部現行のままとする方針に転換した。

だが、ここで疑問が生じる。「それなら、結局誰の負担が増えるのか?」という点だ。

■ 高額療養費制度とは?
まず、この制度の仕組みを簡単に説明すると、
医療費が一定額を超えた場合、その超過分は公的保険が負担する仕組みになっている。
つまり、重い病気や手術が必要になっても、患者の自己負担には上限があるというものだ。

しかし、これは当然ながら医療保険財政に負担をかける。
そこで政府は、財源確保のために自己負担の上限額を引き上げようとしたのだが、
全国がん患者団体連合会などから強い反対を受けた。
特に、がんや慢性疾患の長期療養が必要な人にとって、負担増は深刻な問題だからだ。

■ 現役世代の負担軽減 vs. 長期療養患者の負担増
政府は「現役世代の保険料負担を減らすため」と説明していたが、
実際のところ、どこかの負担を減らせば、どこかの負担が増える。
もし高額療養費制度での自己負担を引き上げると、長期療養の患者が苦しくなる。
一方で、引き上げを見送れば、現役世代の保険料負担が下がる可能性も減る。

今回の修正で、長期療養患者に配慮する形になったが、では、その分の財源はどうするのか?
最終的には、現役世代の負担軽減策も縮小される可能性が高い。

■ 「調整」は誰のためなのか?
政府の方針変更は、一見「患者に配慮した柔軟な対応」のように見える。
しかし本質的には、財源不足の問題を先送りしているだけとも言える。

高齢化が進み、医療費が増え続ける日本にとって、
どこで費用負担のバランスを取るのかという問題は避けて通れない。
今回の修正で一時的に救われる人がいる一方で、
今後、さらに別の形で負担増の議論が出てくるのは間違いない。

今回の見直しが「誰にとっての救済なのか」、そして「そのしわ寄せはどこにいくのか」。
この点を意識しておかないと、将来的にもっと大きな負担が私たちに降りかかってくるかもしれない。

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