“男性優遇”と感じる6割の声—その現実と背景を考える
内閣府の調査によると、「職場で男性のほうが優遇されている」と考える人は63.8%、
「家庭生活でも男性が優遇されている」との回答は60.7%にのぼりました。
さらに、法律や制度の面でも「男性のほうが有利」と感じる人が50.4%と半数を超えています。
この数字を見て、「やっぱりまだまだ男性が優遇されているのか」と感じる人もいれば、
「そんなことはない」と疑問を持つ人もいるでしょう。
しかし、単に「数字がこうだから不平等だ」「意識の問題だから仕方がない」と
片付けるのではなく、ここから何が見えてくるのかを考えてみる必要があります。
●“優遇”とは何か?
「男性の方が優遇されている」という回答が多い背景には、何があるのでしょうか?
たとえば職場では、管理職や役員の多くがいまだに男性であること、
同じ仕事をしていても昇進のスピードに男女差があること、
出産や育児の負担が女性に偏りやすいことなどが指摘されています。
家庭ではどうでしょう?
「家事や育児は女性の仕事」という固定観念が残っているため、女性の負担が大きくなりがちです。
その結果、「家庭内の意思決定は男性が主導しやすい」「女性のキャリアが制限されやすい」
という現象につながります。
つまり、「男性優遇」と感じる背景には、職場や家庭に根付いた“前提”が影響しているのです。
●変わらない現状、その理由は?
今回の調査結果は、前回と比べても大きな変化がないとのこと。
つまり、「男性が優遇されている」と感じる割合は、この数年間ほぼ変わっていないのです。
●これはなぜでしょうか?
一つの理由として、「表面的なルールは変わっても、現実は簡単に変わらない」ことが挙げられます。
たとえば、企業が「女性の活躍推進」を掲げても、育休を取ると昇進が遅れる仕組みがあれば、
女性は働きにくいまま。男性が育休を取ろうとしても「周囲の目が気になる」と感じれば、
制度があっても活用されません。
また、社会の意識も一朝一夕には変わりません。
「男性が家事をするのは偉い」「女性がバリバリ働くのは珍しい」
といった価値観が根強く残っていれば、性別による役割分担が当たり前のように続いてしまうのです。
●これから必要なことは?
この調査結果は、「男性優遇をなくすべき」と訴えるためだけのものではありません。
むしろ、「なぜこうした認識が続くのか?」を冷静に分析し、
変えるべき点を考えるきっかけにすべきです。
まず重要なのは、「男女どちらが優遇されるべきか」という対立ではなく、
「誰もが生きやすい仕組みとは何か」を考えること。
・男性が育休を取りやすい職場環境を整える
・女性がキャリアを継続しやすい制度をつくる
・家庭内の役割分担を見直し、パートナー間で話し合う習慣を持つ
こうした具体的な取り組みが、「優遇」「不遇」といった不満を減らし、
誰にとっても働きやすく、暮らしやすい社会につながるのではないでしょうか。
「男性優遇」と感じる6割の人たちの声は、単なる不満ではなく、
私たちの社会が抱える現実の一端を示しています。
その現実をどう捉え、どう変えていくのか。それを考えることこそが、
本当に意味のある議論なのではないでしょうか。