雇用保険番号の再取得、7年ルールの廃止が意味するもの

2024年12月、厚生労働省は雇用保険法施行規則の改正案を公表しました。
この改正は、一見するとハローワークのシステム整備による「手続きの効率化」に見えますが、
その背景には、働き方の多様化や雇用の流動性が高まる現代の社会変化が大きく関係しています。

これまで、離職から再就職までの期間が7年以上経過した場合、
新しい被保険者番号を発行する例外ルールがありました。
しかし、このルールが廃止されることで、過去の雇用履歴が一つの番号に統合される運用に変わります。
ここで重要なのは、単なる運用ルールの変更ではなく、この改正がもたらす「労働者にとっての意義」です。

●背景にある課題
まず、これまでの運用では、7年という期間が過ぎると新しい番号が発行され、
過去の雇用履歴との紐付けが失われるケースが発生していました。
雇用保険の受給資格や履歴確認が煩雑になり、労働者自身が不利益を被る可能性もありました。
例えば、過去の履歴を証明するための手続きに時間がかかることで、失業給付の申請が遅れるといった問題です。

加えて、近年の労働市場は柔軟性を増しており、働き方も多様化しています。
一つの会社で長期間働く人だけでなく、フリーランスや複数の短期雇用を経験する人が増えています。
そのため、雇用履歴を正確に管理する仕組みがこれまで以上に重要になっています。

●改正がもたらすメリット
今回の改正によって、7年を超えても同一の被保険者番号を保持できるようになります。
労働者の雇用履歴が一元管理され、以下のようなメリットが期待されます:

1:手続きの簡素化…失業給付や年金との連動がスムーズになり、労働者が余計な手間をかけずに済む。
2:透明性の向上…企業側も労働者の正確な雇用履歴を確認しやすくなり、不正リスクの軽減につながる。
3:労働者の安心感…過去の履歴が失われないことで、自身のキャリアや社会保険履歴が守られる。

●これからの課題
ただし、この改正が即座にすべての課題を解決するわけではありません。
例えば、システム上のトラブルや、情報管理の透明性とセキュリティ確保は今後の大きな課題として残ります。
また、労働者がこうした仕組みの変更を理解し、適切に対応できるよう、政府や企業による周知活動が不可欠です。

●結論:働く人が得られる「安心」
今回の改正は、単なる事務手続きの改善にとどまらず、働く人の「キャリア」と「権利」を守る大きな一歩です。
過去の雇用履歴が切り離されることなく、長い目で見た社会保険の連続性が確保される点は大きな進展と言えます。
ただし、制度が変わる背景や意義を労働者自身が正しく理解することもまた、重要なポイントです。

働き方が多様化する今、こうした制度改正が一人ひとりの安心につながる社会であってほしいと願います。

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